第59回国際原子力機関(IAEA)総会 日本政府代表演説

2015/9/14
議長,事務局長,御列席の皆様,
初めに,議長閣下が第59回IAEA総会議長に選出されたことをお祝い申し上げます。また,日本政府は,トルクメニスタン,アンティグア・バーブーダ及びバルバドスのIAEA新規加盟を歓迎します。
原子力の平和的利用の促進と核不拡散の確保というIAEAの活動は,憲章採択から60年を来年に控えた今,その重要性をますます高めています。我が国は天野事務局長のリーダーシップの下,IAEAがその重要な任務を果たせるよう,引き続き,可能な限りの支援を行っていく考えです。
本年4月から5月にかけ,2015年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が開催されました。同会議では最終文書の採択には至りませんでしたが,引き続き,NPTが核軍縮,核不拡散及び原子力の平和的利用の礎石であることに何ら変わりはありません。我が国は,NPT体制の維持・強化を主導するとともに,そのためにIAEAが果たす役割を,引き続き,力強く支持していきます。
 
議長,
我が国は,IAEA福島報告書の発出を歓迎すると同時に,報告書作成に携わった全ての専門家,加盟国及び国際機関に敬意を表します。我が国は,報告書の内容を真摯に受け止めています。
福島第一原発の廃炉・汚染水対策は,着実に進捗しています。4号機の使用済燃料プールからの燃料取り出しは,昨年12月に完了しました。また,1号機から3号機の原子炉内の燃料デブリの調査も,ロボット技術等あらゆる分野の最新技術を結集しながら始められています。
汚染水対策は大きく前進しました。タンク内の汚染水の浄化が本年5月までにいったん完了し,地下トンネルにたまっていた高濃度汚染水の除去も本年7月に完了しました。さらに,井戸からの地下水汲み上げ,海側遮水壁,陸側遮水壁などの重層的な取組により,汚染水の発生抑制や海洋への流出削減を進めています。
廃炉・汚染水対策が,IAEAを始めとする国際社会との協力に支えられていることに改めて感謝します。引き続き,地元の方々,国際社会への積極的な情報発信に努めるとともに,国際社会に開かれた形で廃炉・汚染水対策を進めていく考えです。また,本年4月には,廃炉に関する先端的技術の研究開発や人材育成を推進する観点から,日本原子力研究開発機構に「廃炉国際共同研究センター」を設置しました。2017年には,福島県に「国際共同研究棟」を整備することを予定しており,今後,国内外の大学や研究機関の協力を得て同センターでの活動が国際的な廃炉研究に寄与していくことを期待します。
福島第一原発事故によって影響を受けた人々の生活の回復も一歩一歩進んでいます。除染が進み,生活インフラが整備され,住民と十分な協議を行った結果,昨年4月以降,3つの市町村の避難指示が解除され,住民のふるさとへの帰還が可能となりました。日本産食品の輸入規制についても,科学的根拠に基づいて各国の規制の撤廃・緩和が進んでいます。更なる撤廃・緩和に向け,食品の安全性に関する情報を積極的に発信しています。本日昼食時に我が国が主催したレセプションでは,風評被害に苦しむ福島を含めた東北地方の日本酒やお菓子を用意しましたが,多くの方に足をお運びいただきました。これらの産品は,科学的に安全性が証明されています。
 
議長,
福島第一原発事故後,我が国は原子力安全の抜本的強化のため,様々な取組を進めてきました。2012年9月には独立性の高い原子力規制委員会を設置し,2013年7月には大幅に強化された新規制基準を策定しました。
また,IAEAと連携して,本年6月には東京電力柏崎刈羽原発がIAEAの運転安全調査団(OSART)ミッションを受け入れました。更に,原子力規制委員会は,来年1月,総合規制評価サービス(IRRS)ミッションを受け入れるべく,準備を進めています。引き続き,IAEAとも協力し,原子力安全の向上に向け,努力を重ねていきます。
 
議長,
我が国は,福島第一原発の経験と教訓を踏まえ,強化された新規制基準を満たした原発は,重要なベースロード電源として再稼働させていく方針です。新規制基準の下,2年以上にわたる厳格な審査を経た上で川内原発1号機が【8月11日に再起働され,発電を行いながら,検査の最終的なプロセスにあります。】運転の安全に万全を期すとともに,設置自治体の理解も得ながら,電力の安定供給を図っていく考えです。
また,本年7月,政府は,エネルギー基本計画を踏まえ,「長期エネルギー需給見通し」を策定しました。その中で,2030年度における総発電電力量に占める原子力発電の割合は20~22%となっています。今後,現実的かつバランスの取れたエネルギーミックスの実現に向けた総合的な取組を進めていきます。
これら原子力政策全体の方向性,つまり,今後の研究,開発及び利用の目指す方向性については,私が議長を務める原子力委員会において「基本的考え方」の検討を進めております。
さらに,我が国は,利用目的のないプルトニウムは持たないとの政策を堅持し,需給バランスを考慮に入れつつ,プルトニウムの適切な管理・利用を行っていきます。
 
議長,
現在行われている原子力安全及び国際協力強化に向けた努力をさらに進める必要があります。
事故の教訓を国際社会と共有し,国際的な原子力安全を強化するため,原子力のインフラ整備,International Nuclear Management Academy(INMA)等の人材育成,広報の分野におけるIAEAの活動への支援を継続します。更に,原子力安全の観点から,日本の原子力技術を一層発展させ,そのメリットを世界の国々と享受していく所存です。
本年2月,ここウィーンにおいて,原子力安全条約に基づき,原子力安全に関するウィーン宣言が採択されました。同宣言には,国際的な原子力安全強化のための様々な方策が盛り込まれており,我が国は,その実施を加盟国に強く奨励します。
また,本年4月,我が国の締結により,原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)が発効したことを歓迎します。これにより,国際的な原子力損害賠償制度が拡充されていくことを強く期待します。
 
議長,
本年9月末,ニューヨーク国連本部において,持続可能な開発のための2030アジェンダを採択するサミットが開催される予定です。原子力技術は,医療,食料・農業,水資源管理等,様々な分野で開発を支えています。我が国は,天野事務局長が掲げる「Atoms for Peace and Development」のイニシアティブを支持します。IAEAが開発分野で更に積極的な役割を担うため,ReNuAL(リニューアル)プロジェクト等IAEAが進める具体的な施策を力強く支援していきます。
本年開催されたNPT運用検討会議で,我が国はIAEAの平和利用イニシアティブ(PUI)に対し,向こう5年間で総額2,500万ドルの拠出を行うことを表明しました。より幅広い分野で,より多くの人に,より安全に原子力技術の恩恵を届けることが大切です。この観点から,この度,アフリカ,中南米カリブ,アジア大洋州の技術協力地域プロジェクトに対し,総額120万ドル相当の支援を行うことを決定しました。これら地域の関係国やIAEAと連携しながら,更なるプロジェクト実施を支援していきます。IAEA加盟各国に対し,一層のPUIへの支援拡充を呼びかけます。
この他,今後原子力の平和的利用への需要が高まるアジア地域における原子力協力を推進するため,我が国はアジア原子力協力フォーラム(FNCA)を主導しています。本年12月には,日本で大臣級会合を主催する予定で,FNCAにおいては,我が国の原子力発電分野のみならず,農業・産業・医学分野等における放射線利用の分野で,アジア,そして,世界の国々に貢献して参ります。
 
議長,
日本は,核セキュリティの強化に,尽力しています。
例えば,東海村にある「核不拡散・核セキュリティ総合支援センター」(ISCN)は,昨年,アジア諸国等の専門家,約400名に対して,核セキュリティ等に関するトレーニングを実施しました。ISCNによるこうした研修の受講者は,2010年以来,合計1500名に上ります。
また,本年2月,我が国は,2週間にわたる国際核物質防護諮問サービスのミッションを受け入れました。我が国は,核セキュリティ向上のため,ミッションから示された勧告事項や助言事項について,適切な措置を講じていきます。
来年3月31日から4月1日に予定されている核セキュリティ・サミット,及び来年12月に予定されている第2回IAEA核セキュリティ国際会議が成功するよう,引き続き協力していきます。
我が国は,IAEAによる核物質防護条約改正の発効に向けた取組を支持しています。本年は改正が採択されてちょうど10年目になります。発効まで更に14か国の締結が必要ですが,我が国としても早期発効のため,該当諸国に対して早期締結を呼びかけます。
これらの活動を通じて引き続き我が国国内の核テロの懸念に対処するとともに,世界の核セキュリティ強化に貢献していきます。
 
議長,
IAEA保障措置は,核不拡散のための最も重要な手段であり,我が国はその強化・効率化の取組を引き続き支持していきます。包括的保障措置協定及び追加議定書の普遍化は,国際核不拡散体制を強化するため,極めて重要です。昨年の総会以降,新たに1カ国が包括的保障措置協定を,また2カ国が追加議定書に批准したことを歓迎します。
日本政府は,イランの核問題の解決に向けた全ての交渉当事者のこれまでの粘り強い努力を高く評価します。また,包括的共同作業計画を,国際不拡散体制の強化に資するものとして,さらには,中東地域の安定につながるものとして歓迎すると同時に,同計画が着実に履行されることを強く期待します。我が国として,同計画の着実な履行に向け,可能な支援を行っていきます。IAEAとイランの間で合意されたロードマップに基づき,未解決の問題を本年中に解決することも重要です。これらの合意を履行するにあたりIAEAが果たす役割は極めて重要であり,IAEAが必要な活動を行えるよう,人的・財政的リソースについて,各国が責任を持って応分の負担をしていくことが必要です。
北朝鮮による核開発・ミサイル開発の継続は,東アジア地域のみならず国際社会全体に対する深刻な脅威であり,我が国はこれを強く非難します。我が国は,北朝鮮に対し,更なる挑発行動を行わないこと,完全で検証可能かつ不可逆的な非核化に向けて具体的措置をとり,全ての関連活動を停止すること,2005年の六者会合共同声明及び関連安保理決議を完全に実施すること,NPT及びIAEA保障措置を履行することを求めます。また,この問題にIAEAが引き続き関与することを支持します。
我が国は,中東非大量破壊兵器地帯設置を含む,国際的な核不拡散体制強化の努力を支持しています。先般のNPT運用検討会議の結果を踏まえつつ,同地帯設置を前進させる観点からも,中東地域における信頼醸成に向けた全体的な努力を継続すべきと考えます。我が国も協力を惜しみません。
我が国は,昨年9月に,アジア太平洋保障措置ネットワーク(APSN)の議長を豪州から引き継ぎましたが,IAEAや他の地域とも連携しながら,各国の保障措置機関の能力向上支援,当局者間のネットワークの発展等を通じ,APSNの活性化に貢献していきたいと考えています。
 
議長,
我が国は,国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の旗を掲げ,世界の平和と繁栄,安定にこれまで以上に積極的に貢献したいと願っています。これまでに申し上げた取組はその一環であり,我が国は今後とも,核不拡散,原子力安全,核セキュリティを確保しながら,原子力活動を継続していく考えです。
来年IAEAは憲章採択60周年を迎えます。この節目を前に,国際社会の責任ある一員として,原子力の平和的利用の確保,推進に一層貢献していく覚悟を改めて表明いたします。
御清聴ありがとうございました。
 
The Practical Export Control Workshop was hosted by the Wassenaar Arrangement as part of its 20th Anniversary programs and held at the Permanent Mission of Japan to the International Organizations in Vienna on 27 and 28 June 2016. More than 100 government representatives from 46 countries participated in the technically focused Practical Workshop.
 
Workshop speakers included the 2016 WA Plenary Chair Ambassador Anu Laamanen (Finland), 2016 WA General Working Group Chair Ambassador Paul Beijer (Sweden), 2015-2016 WA Experts Group Chair Robertas Rosinas (Lithuania), 2016 WA Licensing and Enforcement Officers Meeting Chair Jon Erik Strömö (Norway), as well as the Head of the WA Secretariat, Ambassador Philip Griffiths. The WA control lists as well as export licensing and enforcement topics were covered during the two days.
 
The following link from WA’s webpage contains more details:
http://www.wassenaar.org/wp-content/uploads/2016/06/June-2016-Workshop-media-release.pdf